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- 2024/12/28(土) 15:36:47|
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1-2へ ▼目次▼
ナチュラルさんは、この島に『あらわれた』最初の少女だ。自分ではもう少女というような歳でもないと思っているが、あらわれた当初は少女だったことには変わりはない。
様々な少女がこの島に『あらわれ』、いずこか、自分の向かうべき場所へ向かって消えていった。
少女達は突然にあらわれ、ある日突然に消えて無くなる。
「あの子は、足輪がいらなくなった」
ナチュラルさんは、島から消えていった少女のことをそう言っている。
足輪は、未来にほかになにも持たない少女達が浮かんでいかないために必要なものだ。足輪には継ぎ目が無く、取り立ててそれ自体の重さを感じることもない。けれども、足輪がなければ自分たちがふわふわ浮いていってしまうことに異論をはさんだ少女は今のところいない。
「あの子、今頃どうしてるのかしら」
「ろろろろ? 誰のこと」
いつものように早朝の風見の糖で物思いにふけっていたナチュラルさんに後ろから抱きついてくるものがあった。
「ぅわっ……落ち……落ち……落ち着きなさい、わたし!」
この島の少女は高いところから落下して怪我をするということはない。足輪のはまった両足を下にしてゆっくりと降下していくだけだ。
それでも、落下に対する本能的な恐怖は、ナチュラルさんに染みついている。もっともそれはこの島の少女全員について言えることなのだけれども。
「シロ、あなたいままでどこに!」
「叫ぶ岩を探してたんだよ」
いつまでたってもナチュラルさんの肩胛骨のあたりまでしか背丈のないこの少女こそがついさっきまでナチュラルさんが『足輪のいらなくなった』と思っていた少女である。
シロはもう七日間も、少女達の共同の住居に姿を現さなかった。
「新しい子が来たんでしょう? 叫ぶ岩が教えてくれた!」
シロは高所に対する恐怖などまったく感じていないようで、欄干の上に立って錆びた青銅の風見鶏の真似をしている。
叫ぶ岩のことは、ナチュラルさんにもわからない。それとなく聞いても、シロは
「叫ぶ岩だよ。星の見える夜はきこえるよね?」
などというばかりでさっぱり要領を得ない。ほかの少女達に聞いても頭を振るばかりだ。
「新しく来た子は館に?」
ナチュラルさんの知る限り一度も自発的に梳かしたことのない髪の毛は、主であるシロの精神を表すかのようにあちこち好き放題に跳ねている。
「まぁ、そうだけど」
「目はさました?」
「さましたような、さましていないような……」
この島に『あらわれた』少女は、最初の一日から二日は夢現の状態のまますごす。
「じゃあ、元気づけてあげないとね!」
その見た目と言動からは推し量れないが、シロはナチュラルさんに次いで長くこの島にいる。『あらわれた』少女を元気づけるのはいつだってシロの役目だ。
「よーし! いくぞー!」
呆気にとられたナチュラルさんをおいて、シロは一人で盛り上がりながら風見の塔の階段を足音も軽やかに下りていった。
そういえば、シロは一体いつのまに風見の塔の九十二段ある階段を上ってきたのだろうか?
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