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- 2025/01/14(火) 16:20:06|
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波打ち際。
もし指輪島(ゆびわじま)の上空を通る渡り鳥がいたなら、すぐさまこの島がそう呼ばれる理由を察しただろう。
もし、指輪を知っている渡り鳥がいたらの話だけれど。
この島は、ほぼ完全な円形で、島の中心には巨大な湖がある。
ヨウは、暇な時間があると湖に潜ってその湖底を見ようとする。湖の水はどこまでも透き通っているのに、そこのほうはどうなっているのかどうしてもわからないのだ。
これだけ海に近いのに、湖の水は真水であることから、湖はお椀を伏せたような岩盤に雨がたまったものなのだろうといっていたのはだれだったろうか。
「ナチュラルさんだったかなぁ?」
そばかすだらけの頬を掻きながら、ヨウは黒い大きな傘を広げる。昼間のうちは滅多に雨の降ることのない指輪島では、雨傘は必要ない。
つまりこの大仰な傘は日傘というわけだ。肌が弱く、『館』の外を出歩くときは大抵日傘を差しているシロのものを勝手に借りてきてしまった。
ヨウが必要だったのではないし、傘を持って『お爺さん風車』から飛び降りようというのでもない。
波打ち際だ。ヨウの足下には初めて顔を見る少女が寝ている。
この指輪島には、人間は少女達しかいない。その少女達とて人間と呼ぶには少しとまどいを覚えてしまうような変わり種ばかりだ。
性格ももちろんそうだが、島の少女達はみな両足首に決して錆びない金属製の足輪をしている。足かせではない。
この足輪がなければ、少女達はちょっとした風にも吹き飛ばされてしまうほどに体重が軽いのだ。
「わたしたちは未来のほかになにも持たないから」
少女達の長姉たるナチュラルさんの言葉だが、果たしてどの程度本気なのだろうか。
「とにかく……指輪島へようこそ。ヨウはあなたを歓迎するよ!」
ヨウは波打ち際で気を失ったままの少女に日傘を差しだしてやりながら微笑むのだった。
ヨウの視線の先には、新しい少女の足にはめられた銀色に輝く足輪があった。
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