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- 2025/01/15(水) 07:12:14|
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公園で休憩しているタクシーの運転手さんのスーツの背中には、大きなシワが刻まれている。
運転席のシートを倒して昼寝をするためにできる、職業病ならぬ職業シワだ。
スラックスの膝裏にもシワが……と思いきや、あまりシワになっていない。この運転手さんはゆったりと足を伸ばして運転するタイプなのだろう。
車内ではずっと制帽をかぶっているせいなのか、銀灰色の髪の下の頭皮が、かなりの部分で透けて見えている。
公園の鉄棒に寄りかかって、雨上がりの曇り空を見上げては煙をぷかぷかと吹いている。
硬そうな、数十年分の経験を塗り固めたような人差し指にはさまれているのは、両切りの煙草。
ショートピースだ。
わたし、車の中でピース。
PEACH JOHNと書かれた、ピンクと黒のストライプ模様のバッグを膝の上にのせている。
PEACH JOHNというのはわたしが知らないだけで相当に有名なファッションブランドなのか、バッグを膝に乗せた少女は、誇らしげな表情でまっすぐに前を向いている。
そのブランドのラインナップなのだろうか。桃色ではなくてピーチ色と呼んだ方がふさわしいような鮮やかな色合いのタイツが嫌でも目を引く。
つけ爪には、銀のスパンコールを基調として、サクランボを思わせるアクセントが散らしてある。
ピーチ色のバッグとタイツを際だたせるためなのだろう。膝下までのブーツも、ダウンジャケットもブラックだった。
わたしが両手をこすりあわせながら、電車を待っていると、その少女の携帯が着信音を響かせた。
桜色の携帯を耳に当ててほほえむ少女は、ふくらむつぼみのようだった。
あたらその花が散らされないことを、心から祈ろう。
屈託していた。
もちろんわたしがである。
そんなわたしの目の前に、木村拓哉が座っていた。
屈託のために、比喩ではなくほんとうに暗くなった私の目による錯覚だと思った。
錯覚だった。
髪型だけが、ちょっと前の木村拓哉だったのだ。同じような色に染めて、おそらくはパーマもかけている。
左の眉尻の上あたりに、髪の分け目をつくって左右に流している。ウェーブした前髪が鬱陶しい。
顔はそれに輪をかけて鬱陶しい。煙草と酒で長い間痛みつけてきた皮膚は灰色にくすみ、太っているわけでもないのに弛んでいる。
細い金色のフレームの眼鏡は、貧相な顔の上にのることで、より品性の欠如を浮き彫りにしてしまっている。 なんにしろ。
日付も変わろうというそのときのわたしは、本当に屈託していた。
明日の朝は雪かもな。似非キムタクのオッサン、風邪には気をつけてな。